不当解雇された場合の解決金

滋賀の弁護士の安田です。

「不当解雇されたので会社に対して解雇予告手当や損害賠償を請求したい」という相談を受けることがあります。

私自身、司法試験に合格するまでは労働法について勉強したことがありませんでした。

ですから、司法試験に合格した直後の私であれば、不当解雇されたら会社に損害賠償請求すべきだと考えていたと思います。

不当解雇の争い方

不当解雇をしてきた会社に戻りたくはないと考える人もいると思います。

ですが、不当解雇の争い方としては、解雇が無効なので労働者の立場にある(地位確認)と主張し解雇された後の給料を請求するのが一般的です。

※現在、「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」が設置されており、将来的に不当解雇の争い方が変わる可能性があります。

 

解雇されて会社で仕事をしていないのに給料を請求するのは変な気もしますね・・・。

ですが、民法という法律により、会社が無効な解雇をして仕事をすることを拒否している場合には、労働者は給料を請求できることになっています(民法536条2項参照)。

※民法改正により536条2項の文言は変わっていますが、この解釈が変更されることはないようです(筒井健夫・村松秀樹編著「一問一答民法(債権関係)改正」2018年・229頁参照)。

平均月収の6割を超える部分も請求できる

労働基準法26条は、会社の「責めに帰すべき事由による休業」の場合、会社は平均賃金の6割以上の手当を支払わないといけないことを定めています。

ですから、会社の不当解雇で仕事をしていない場合、労働者は平均月収の6割しか請求できないようにも思えます。

しかし、労働基準法26条は民法536条2項の適用を排除するものではないと解釈されております。

ですから、解雇の場合には、労働基準法26条の休業手当ではなく、民法536条2項に基づいて給料を請求するのが一般的です。

解決金

このような争い方をして、解雇が無効と判断される可能性が高くても、会社に戻ることはなく会社から解決金という名目でお金を払ってもらうケースが大半です。

そこで、解決金はいくらぐらいもらえるのかが問題となります。

2015年4月に独立行政法人労働政策研究・研修機構が出した「労働局あっせん,労働審判及び裁判上の和解における雇用紛争事案の比較分析」では、「賃金月額と解決金額の間にはかなり明確な比例関係が存在する」(67頁)とされており、以下のような記載があります。

労働局あっせん 平均値は1.6か月分
労働審判 平均値は6.3か月分
裁判上の和解 平均値は11.3か月分

※裁判上の和解とは、簡単にいえば、民事訴訟において会社と解雇された人がお互いに譲り合って話し合いで解決することです。

 

月収30万円の人が不当解雇されて労働審判を申し立てた場合、単純に平均値で計算すれば、解決金は189万円(30万円×6.3か月)ということになります。

もっとも、労働審判や民事訴訟では、不当解雇について争う際に残業代請求等を行うこともあります。

ここでいう労働審判や裁判上の和解の解決金には残業代請求分等も含まれてしまっているため、不当解雇の解決金のみの場合よりも高くなっている可能性があります。

私自身、大津地方裁判所等で労働審判で不当解雇を争った経験からは、平均的な解決金は6.3か月分よりも低いだろうと思っております。

(ちなみに、上で紹介した比較分析には、労働審判の場合の中央値は4.4か月分で,裁判上の和解の場合の中央値は6.8か月分と記載されています)

また、これはあくまでも平均値ですから、個別の事案での解雇から解決までに期間の長さや解雇が無効である可能性の程度等が解決金の額に大きく影響します。