個人再生(小規模個人再生)について

滋賀の弁護士の安田です。

ここでは、個人再生のうちの小規模個人再生(しょうきぼこじんさいせい)とその手続の流れなどについて、
かんたんにご説明いたします。

私は滋賀の弁護士ですから、以下の内容は、
他の都道府県の場合には、違う部分があるかもしれません。

 

個人再生とは

個人再生といいますのは、裁判所を利用して、
債務(借金)を大幅にカットして残額を返済していく再生計画(さいせいけいかく)を認めてもらい、
残額を基本的に3年間分割で返済していく手続です。

債権者は破産の場合よりも損したくない

債務整理の方法の一つである破産手続では、
原則として、債務者の財産を売ってお金に換えて、そのお金を債権者に配当することになります。

債権者の立場からすれば、
3年間の分割にされたうえに破産手続の場合よりも入ってくるお金が少なくなるのは嫌ですよね。

ですから、個人再生では、
破産手続で債権者に配当する金額以上を返済しなければなりません

住宅ローンが残っている自宅を手放したくない

個人再生では、住宅ローンを契約通りに支払い続けるといった内容の再生計画を認めてもらうことで、
自宅を残せる可能性があります。

自宅を残す場合には、
住宅資金特別条項(じゅうたくしきんとくべつじょうこう)というものを再生計画の中に定めることになります。

個人再生は増える傾向

個人再生の日本全国での申立件数は、
2014年は7668件でしたが、
2018年は13211件となっており、
増える傾向にあります(平成30年度司法統計年報より)。

実際に、私が弁護士になった2011年頃に比べて、
2016年以降は個人再生のご相談をお受けする割合が増えたように思います。

でもなぜ個人再生が増えているのかは私にはよくわかりません・・・

2種類の個人再生

個人再生には以下の2種類のものがあります。

①小規模個人再生(しょうきぼこじんさいせい)

給与所得者等再生(きゅうよしょとくしゃとうさいせい)

給与所得者等再生の場合は、多くの債権者が再生計画に反対しても利用できるのですが、
小規模個人再生よりも利用条件が厳しくて、債権者に返済する総額が多くなる可能性があります。

ですから、給与所得者等再生はほとんど使われておりません。

実際にさきほどの2018年の13211件の内訳は、
小規模個人再生が12355件で、給与所得者等再生は856件です。

したがいまして、2018年の個人再生の約93%は小規模個人再生です。

(私自身、早口で「給与所得者等再生」と言うと、噛んでしまいます・・・)

ちなみに滋賀県(大津地方裁判所)での2018年の個人再生の申立件数は、
小規模個人再生が137件で、給与所得者等再生は7件です(平成30年度司法統計年報より)。

 

小規模個人再生の手続の流れ

このようなことから、
以下では小規模個人再生の手続の流れを、
7つに分けて、
かんたんにご説明いたします。

①申立て準備

②再生手続開始の申立て

③再生手続開始決定

④再生計画案の提出

⑤債権者による決議

⑥再生計画認可決定

⑦再生計画認可決定の確定

①については、早く進む方もいらっしゃいますし、
時間が掛かる方もいらっしゃいます。

申立てをした後に事情が変わって予定通りの返済が難しくなり、
④の段階でストップしてしまう方もいらっしゃいます。

④の段階でストップしない方の場合ですと、
②から⑦までの期間は、5か月間ぐらいです。

なお、再生手続開始決定や認可決定がでたことや氏名・住所などは、
官報にのります。

インターネット版官報というものがありますので、
直近30日分の官報にのった情報は、
インターネットで見ることができます。

もっとも、毎日の官報の内容をチェックする方は少ないとは思います。

 

①申立て準備

まず、貸金業者などの債権者に通知を送って、
債権者からの請求をストップします。

しかし、
住宅ローンを組んでいる自宅を残す場合には、
住宅ローンの支払いは続けて行ったりします。

自宅を残す場合には、
住宅ローンの契約書・自宅の登記・自宅の利用状況などを確認
して、
さきほどの住宅資金特別条項を利用できるかをチェックする必要があります。

申立てをするには、資料を集めて書類を作成しなければなりません。

どういう資料が必要になるかを判断するには、
ご事情(職業・家族構成・財産など)をお聞きする必要があります。

お聞きした内容にもとづいて資料を集めていただきます。

また、借金が増えていった事情や家計収支表(家計簿)などを書いていただいたりもします。

個人再生では、住宅ローン等をのぞいた債務額におうじて、
返済しなければならない金額についてのルールがあります。

 

例えば、住宅ローン等をのぞいた債務額が300万円の場合

この場合には、少なくとも100万円を返済しなければなりません。

そして、100万円を3年で返済することになりますので、
1か月あたりの返済予定額は約2万8000円ということになります。

(計算式)
100万円÷36か月≒2万8000円

この場合、月々の家計収支表から2万8000円の返済が可能でなければ、
再生計画案の実現が難しいことになります。

もっとも、個人再生では、
破産手続で債権者に配当する金額以上を返済しなければならないと申し上げました。

ですから、仮に自宅を売った場合に住宅ローンが完済できて手元にお金が残りそうな場合などでは、
破産した場合に債権者に配当しなければならない金額が100万円を超えてしまうことも考えられます。

そうなりますと、債権者に返済する総額は100万円では足りないことになります。

 

私の場合、何度か事務所に来ていただき打ち合わせを行いながら、
申立て準備をすすめていきます。

 

②再生手続開始の申立て

申立て準備が整った後、
裁判所に書類や郵便切手などを出して再生手続開始の申立てを行います。

出す書類は、
再生手続開始申立書
各債権者の債権額などを書いた債権者一覧表
家計収支表
財産目録
などです。

その後、裁判所で書類のチェックが行われて、
裁判所から追加資料などを出すよう求められたりしますので、それに対応します。

 

③再生手続開始決定

無事裁判所のチェックをクリアできれば、
裁判所が再生手続開始決定を出します。

遅くとも開始決定後には、
毎月の収入から月々の返済額予定額以上の金額を、
専用の口座に積み立てしてもらうことになります。

さきほどの住宅ローン等をのぞいた債務額が300万円の例ですと、
月々3万円程度の積み立てをしていただくことになります。

 

裁判所の判断によって、
個人再生委員(こじんさいせいいいん)が選任される場合があります。

この場合には、個人再生委員の報酬が必要になります。

滋賀県(大津地方裁判所)の場合、弁護士が代理人となって申立てをした場合には、
個人再生委員が選任される確率は低いと思います(私の感覚ではありますが・・・)。

 

再生手続開始決定が出たときには、
債権者による債権届出期間などが設定されます。

裁判所に出した債権者一覧表は各債権者に郵送されるので、
それを見た債権者が債権者一覧表に書いてある金額に再生手続開始決定日の前日までの損害金等を上乗せして、
債権届出書を出してくることがあります。

債権者が出してきた債権届出書をみて内容がおかしければ、
異議を述べることもあります。

 

④再生計画案の提出

債権者から出された債権届出書を見たりして、
債権額を確定して再生計画案などを作成し、
裁判所に出します。

再生計画案の提出期限を過ぎてしまうと、
再生手続廃止決定が出されてしまいますので、
提出期限は必ず守らないといけません。

再生計画案を出すときに月々の積み立て状況の報告も行います。

予定通りの積み立てができていない場合には、
⑤に進まずにしばらく様子をみたりすることになります。

 

⑤債権者による決議

再生計画案について債権者の決議を行います。

 

⑥再生計画認可決定

再生計画案が債権者の決議で可決されると、
不認可事由(ふにんかじゆ)がなければ、
裁判所は再生計画認可決定を出します。

 

⑦再生計画認可決定の確定

通常は、認可決定の約4週間後に認可決定が確定します。

その後、各債権者に対して返済を開始していただきます。

私の場合、再生計画認可決定の確定以降の返済は、
ご自身で行っていただいております。