民事信託(家族信託)だと成年後見と違ってランニングコストが掛からない?

滋賀の弁護士の安田です。

私は、2019年頃に家族信託というものを知りました。
※家族信託と民事信託は基本的に同じ意味の言葉です。
賃貸不動産を所有している高齢者が認知症になり判断能力がなくなると、賃貸借契約ができなくなります。
そうなると、家庭裁判所に成年後見申立人をつけてもらうことになります。
弁護士等の専門職が成年後見人につくと、月々数万円の報酬を払うことになります。
しかし、判断能力がなくなる前に、高齢者がその子どもと家族信託契約を結んで、
子どもに「受託者」になってもらいます。
そして、子どもに不動産の管理を任せれば、専門職に月々数万円の報酬を払わなくてもよくなります。
このように高齢者が判断能力がなくなる前に、その子どもと家族信託契約を結んでおけば、家族で賃貸不動産経営を継続していけるのです。

この話を聞いて、家族信託とはすごい制度だと思い、私は一般社団法人家族信託普及協会の家族信託専門士研修を受けました。

しかし、家族信託について勉強すると、受託者の責任は重いので、その重い責任を全うできる家族がいないと勧めにくいと思うようになり、
今まで家族信託の提案をできずにおりました。

昨年12月に、日本弁護士連合会が「民事信託業務に関するガイドライン」を作りました。
このガイドラインの中には「弁護士による継続的な関与」という項目があり、以下のことが書かれています。
第10 弁護士による継続的な関与
1 民事信託では、受託者に対する実効性ある監督を行うため、原則として、受託者に対する監督機関(信託監督人又は受益者代理人)を設置する。
2 受託者に対する監督機関(信託監督人又は受益者代理人)には、信託契約の締結に関わった弁護士が就任することが望ましい。

ですので、弁護士としては、「家族信託を使えば成年後見と違ってランニングコストが掛からないですよ」とは言いづらいです。

ちなみに、今年の4月から施行されている「司法書士行為規範」にも「民事信託支援業務に関する規律」が定められています。
しかし、「民事信託業務に関するガイドライン」ほど具体的なことが書いてあるわけではないので、
司法書士の方であれば、「家族信託を使えば成年後見と違ってランニングコストが掛からないですよ」と言っても問題ない(?)のかなあと・・・